きんたま空間



 トップページ » 映画感想 » エクスベンダブルズ3 ワールドミッション 

 

エクスベンダブルズ3 ワールドミッション


The Expendables 3

感想:

バカであればあるほど楽しめる、それが「エクスベンダブルズ3」だ。

ここでいう「バカ」とはストレートに「知能が低い」という意味である。

よく「頭をからっぽにして楽しもう」などという表現をみかけることがあるが、意識的にからっぽにしなければならないという事はそもそもいくぶんかの知能があるから出来る事であって、最初っからからっぽの人がそういうことをしてしまうとそれはもう残された自律神経を止めるしかないがしかしそうなると人は死ぬので注意が必要だ。

そういう前置きをしなければならないほど、本作は全く中身の無いストーリーにバカバカしいアクションがこれでもかと詰め込まれている娯楽大作である。

「中身がない」というのは「意味がない」という事ではなく、「アクションシーン以外の場面がそれを盛り上げるために2秒で考えて用意されたのではと勘繰らざるを得ない適当な設定」だからだ。自分を拘束した敵への報復理由、宿敵を絶対に倒さなければならない動機、かつての仲間を切り捨てなければならない心情、親子ほど年の違う連中との信頼の構築などが、すべて「ぶっ殺す!!」という感情と行動のために用意されている。しかしこの映画でそれらを排除し、単なる殺人マシーンが暴れまわるだけの映画にしてしまうと、それはジャンル的にはホラーに分類される気がするので、こういったものはたとえ退屈でも必要なのだ。この「今おしっこに行っても筋を追うのに問題ないタイム」は本作の節目節目に用意されていて、もし何らかの展開があったとしても、その間席を外した鑑賞者が「あ、おそらくこういうことがあったんだろうな」と容易に察せるほど単純なので安心だ。

だが「アクションのための前フリ」を飲み込んでなお、何も考えずに観ようと決心してなお、本作はどこかで働いている「突っ込み脳」が機能してしまうほど、戦闘シーン自体にも大穴が空いている。整合性のとれた昨今のアクション映画を観なれた人は「そんな訳ねぇだろ」という常識を理由とした「突っ込み」が、2時間の間に何度も頭をかすめるだろう。

鳴り物入りで登場した第一作目はバイオレンスなアクションに対しての当然の結果、つまり流血したり頭が吹っ飛んだり、という表現が多かった。二作目でも冒頭ジャン=クロード・ヴァン・ダムによる殺人の執行方法とその報いなどはブラックな臭いを漂わせていた。スタローン自身は「一作目はバイオレント過ぎたし二作目はコミカル過ぎた」と反省している。それを踏まえて出来た三作目は、テレビでも問題なく流せそうなレベルの描写ばかりになっていた。

前作、前々作と観てきたわたしは話が進むにつれ若干混乱したが、実は、 
「今回のバイオレンス描写はこの程度ですよー」という目配せは映画冒頭に行われていた。

その冒頭、ウェズリー・”虚実共に脱税マン”・スナイプスを乗せた装甲列車が収監所へ向かうシーン、エクスベンダブルズ・チームは鉄塔にワイヤーを張る。列車の屋根に乗っている兵隊たちを一気になぎ倒すためだ。そして数分後、そのワイヤーにより兵隊たちはバッタバッタと転んでは次々と列車から落ちていく。

今までのシリーズと同じ暴力表現で撮っていたならば、ここは華やかな「切株シーン」となっていたであろう。ワイヤーによりある者は腹から真っ二つに、またある者は首チョンパされたまま突っ立っていたりするという具合である。しかし今回そんな残酷表現は無い。同様に、銃で撃たれた場合においても、派手な流血はない。つまり観てほしいのは暴力表現ではなく中身……しかしその中身は前述の通りあってないようなものなのだ。ではスタローンは一体何がやりたかったのだろうか……などと悩んだところで、

「こんだけ豪華な俳優集めてドッカンドッカンやってんだから、細かい事は気にスンナ!」

と返されたら何も言えない。つまりはそういう映画だ。

だがそんな中で中盤から登場するたびにその場の空気を持っていくメンバーがいる。それがアントニオ・バンデラス演じる「ガルゴ」だ。彼によってこの映画は別の意味を持つことになる。それは現実にアメリカ国内で苦しい環境に堪えつつ生活している連中へのエールである。彼を単なるコメディ・リリーフと感じるか、それとも自分に重ね合わせてしまうかは、その人自身がこれまでどうやって生きてきたかによって違うだろう。現在アメリカ国内では、彼の出世作となった「デスペラード」の舞台となったメキシコからの不法入国者だけでも150万人いるとされている。ガルゴは多弁であり幇間気質だが、同時にこの「食って行くためならプライドなんて捨てるし何だってやる」というハングリー精神あふれる演技は、合法・不法問わずアメリカ国内で冷たくあしらわれ、差別されながらも生きるために仕事を探して奮闘しているマイノリティたちが見たら応援せざるにはいられなくなるだろう。その反動で「俺も頑張ってこれからも不法滞在するぞ!」と志を新たにする輩が増えるかもしれないが、それについての是非に関してはここでは語らない。

まぁとにかく「いくらなんでもそこは気付こうよ」とあちこちで言いたくなるくらい、敵の扱いが「単なる的」以上の意味を持たない存在であったり、クライマックスで延々と続くアクションシーンが何がどうなっているのかよくわからない勢いだけで撮っている場面が多かったり、新人メンバーへの引継ぎ過程と現役メンバーの復帰まではもっとチャッチャと進めていいんじゃないか、ラストの打ち上げシーンはそのうちスピンオフして「酒呑んでダベってるだけベンダブルズ」が出来るんじゃないか、などとも思ったりする。

「今世紀最大級のご都合主義映画」ではあるし、これに二時間は長ぇよ、とも思うのだが、日本でいえばテレビの時代劇みたいなもんだと思えば腹も立たない。鑑賞時に「刀で切っても血が出ない」「どうやって警護に気づかれずに悪巧みの現場の障子隔てたところへ立てるのか」「上様がこんなところにおられるはずはない」などと突っ込みながら観たところでひとつも面白くはないだろうという、その感覚に似ている。第一、そんな疑問を持ったところで答えは用意されていないのだ。

バカで結構、晩メシ食うな! 玄田哲章の声真似でそう力強く言いたくなる映画だった。大きなスクリーンと大音響、つまり映画館で観るのがお勧めだ。

 

p.s.
残念ながら今回吹替えでの上映が無い。前回以上にフィックスの声優を揃えるだけでも大ごとになってしまうからだと思うが、それに関してはDVD/Bru-Rayの発売を待つしかないようだ。

 トップページ » 映画感想 » エクスベンダブルズ3 ワールドミッション 

 この記事の先頭へ