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ピクセル


Pixels

感想:

観なきゃよかった。

映画「ピクセル」の予告編には、とても興味を惹かれた。

1982年に流行っていたアーケードゲームのキャラクターが、地球の敵となり襲ってくるというコンセプト、またそれを具現化したグラフィックを素晴らしいと思ったからだ。

観に行った。映像以外驚くべき点の無い、呆れた駄作だった。

パックマンやギャラガ、その他この映画に出てくるビデオゲームには、それぞれに思い出があった。日本にはなじみの薄いQ-bertも、リアルタイムで体験していた。唯一「センチピード」だけは、1度もプレイした事が無かった。

ジャンルは地球侵略コメディとでもいうのだろうか、ある日突然地球外生命体からの攻撃を受け、普段はボンクラな主人公とその仲間たちが、持ち前の機転とチームワークで最終的には勝利するお話。どこかで見た、手垢まみれのパッケージだ。箇条書きにするとこんな感じ。

 

・主人公は物語冒頭ひょんなことからヒロインに出会い、当初は相手からの反発を受けるものの最終的には結ばれる。
・主人公にはライバルがいて、過去に遺恨を残していたりするが、最終的にライバルは主人公を認める
・主人公にはお世辞にもカッコいいとは言えない風体のオタクの幼馴染がいるが、オタクが故にピンチの際にそれを切り抜けるアイデァをひらめく事が出来、敵に勝利した事で憧れていたものを手に入れる

 

こんな感じのストーリーを、今まで一体何本観ただろうか。

それが悪い、とは言わない。頭からケツまで何の驚きも無いフォーマットを敷いたとしても、そこに載せたトッピングで輝く作品も多々あるからだ。

しかし「ピクセル」は、これが一体誰に向けて作られた作品なのか分からなくなるほど、そのトッピングの扱い方が雑な上に愛情が感じられなかった。

ナムコフォントを前面に押し出したって、懐ゲーのキャラをバンバン出したって、それすなわち愛情ではないのだ。しかもこの作品は、それらのゲームを知っているゲーマー側から見ても、知らない一般客側からみても、不親切かつ納得いかない描写が多々あるのである。

ドンキーコングで100Mステージをクリアしている画面に「GAME OVER」と表示されたり、パックマンにチートコードがあったり(知ってたとして、それをレバーから入力する方法なんて当時も今も無いし、やろうと思えばプログラムを修正しなければならないし、しかもその原語はアセンブラだ)、主人公の幼馴染がそのキャラクターに恋をしたという架空のゲームのグラフィックが、当時のスペックではどう考えても無理目なものだったり。

「いいんだよ、映画観に来た人全員がゲームマニアってわけじゃないんだから」

ではそちらの目線ではどうか。これもわかりにくい。いくらパックマンが世界的に有名なゲームだとはいえ、基本的なルールの解説くらい盛り込めなかったのだろうか。実際本編に出てくる「パックマンに勝つ方法」は、あるあるネタでありながら、それに納得できるのはやった事がある人だけじゃないだろうか、というくらい不親切な描写だった。

それらを入れる時間が無かったとは言わせない。冒頭のゲーム大会で、この映画を楽しむためのチュートリアルとして、それぞれのゲームを登場させることは出来たはずだ。しかしそれらは「解説が盛り上がってるからここは盛り上がっている感じです」という、「何が凄いのか全然わからない」演出しかなかった。

そして驚く事に、この映画のクライマックスは「ドンキーコングをハンマーで粉砕して勝つ」という描写で終わる。いやそれ、異星人側からしたらチートだろ。「ドンキーコング」ってそんなゲームじゃないだろ、というモヤモヤした想いをぼくは抱いたまま映画はハッピーエンドを迎えた。

誰がハッピーになれたというのだ、こんな滅茶苦茶な話を観て。

祝日に鑑賞したということもあってか、会場には親子連れも結構いた。

「世界はピコピコ崩壊する」というコピーのついた、巨大なパックマンがサンフランシスコを呑みこもうとしているポスターから、その子供たちはどんなストーリーを想像しただろうか。

まさかこんな、大半が退屈な会話劇とふざけたジョークが延々と続くものだとは思わなかっただろう。いっそのことR15にすればよかった。子供に見せる話じゃない。いや、これを懐かしいと感じるのはアラフォーのおっさんおばさんたちだろうから、いっそのことR40とかにしておっぱいや流血などもバンバン入れればまだましだったのかもしれない。

幸いなことに、この映画はアメリカでは製作費も回収できないほどに大ゴケした。100億かけたそうである。

本編に出て来たゲームでやったことがあるものをいずれも愛するぼくとしては、

「ざまあみやがれ」

と言いたくなるほど酷い出来だった。

知り合いがパンフレットの中身をSNSでチラ見させていて、それが大層充実した内容だったので観終わったら買おうと思っていたのだが、それを止めるほどに腹の立つ映画だった。


現実にあるビデオゲームにきちんとリスペクトした作品を観たい人は「シュガーラッシュ」を、ゲームを絡めたストーリーでハラハラドキドキしたい人は「ウォーゲーム」を、ハリウッド映画界のストーリー金太郎飴事情をチラ見したい人はロバート・アルトマンの「ザ・プレイヤー」を鑑賞する事をお薦めします。

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