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スティーブ・ジョブズ


Jobs

感想:

長い間、iMacをはじめとしたAppleのPCプロダクトを買おうという気にはなれなかった。

Windows95が発表されて以降、つまりは仕事にパソコンが必須となるようになってから、昔パソコンをかじっていた事もあって、それまでコンビニの店員程度しか採用されなかったぼくも、昔取った杵柄というやつで「パソコンに詳しい」という売り込みでなんとか台無しになりかけていた自分の人生において、「正社員」の肩書きで就職する事が出来た。まだ就職の際に携帯を持っている事よりも「家に電話が敷いてある」事の方が重要視されていた時代。

生活にも若干の余裕ができて、自宅用のパソコンでも買うかと思い、電気屋を巡った。買ったのは東芝のInfiniaという機種で、「DVDが観れる」という事が売りだった。それで初めて観たDVDは「オースティン・パワーズ」だったと思う。インターネットはまだアナログ通信時代で、ピーガガガという通信音を皮切りにノソノソと出てくるコンテンツを観るのがふつうだった。フレッツISDNが出てくるまで、深夜23時から翌朝8時までのテレホタイムこそが、ぼくのまぎれもない青春だった。

欲が出て、二台目からは自作に走る。ASUSのP3B-Fという、調べた中で一番PCIスロットが多くてBiosの扱いが簡単なマザーボードに、スロット1型のCPUと積めるだけのメモリを差し込んで。

そんななか、iMacは登場した。「電源刺して、電話線につないで、これでネットが出来ますよ、簡単でしょ」という説明と、”Think different”というキャッチコピーと、"Crazy Ones"のCMと共に。しかし「どこか壊れて修理に出したら全部持ってかれる」のが嫌だったぼくはiMacに食指が動く事はなく、その後もパーツを買い替えたりHDDを増設したりという自作ライフを続けた。

 

ぼくの中で、この映画のエンディングにあたる時代はこんな感じだった。iPhone登場はここからさらに10年の年月を要する。

ジョブズの立身出世話としてはこの映画以前に、テレビドラマではあるが「バトル・オブ・シリコンバレー(原題:Pirates of Silicon Valley)」という作品が出ている。中身は本作品同様ジョブズの立身出世話だが、違うのは物語の結末に対する印象だ。彼の物語を2時間程度の枠に収めるにはこの辺がちょうどいいのか、どちらも「ジョブズ復帰」という結末ではある。しかし「バトル〜」は’97年に行われたMacworld Conference & Expoにおいて、ジョブズ講演中のスクリーンにビル・ゲイツが登場する(Macファンにとっては屈辱の)シーンで終わる。この時、誰がその後Appleがこれほどまでに躍進すると予想しただろうか。ジョブズが死去した今となって振り返れば、ここから彼が成し得た成功は正に「映画じゃねえんだから」と思わずにはいられないほど奇跡の連続だったのである。

そういう訳で、「バトル〜」で描かれた彼の半生が面白かったし、彼に関する書籍も面白かったし、あと映画の日で安かったので、「スティーブ・ジョブズ」を観ることにした。終わってまず感じたのは「Apple割引を実施すべき」と思うほど、当たり障りの無い話だったという事である。つまらなくはないんだけど、二度観るほどでもない。

特に残念なのはピクサー社に関する話が一切抜け落ちている事だ。現在のMacに多大なる貢献をする礎となったとはいえ、NeXTコンピュータの話自体は、それほど面白いものではない。むしろ世間が「あの人は今」的な存在となっていたジョブズに対して「どんだけ引きが強いんだよ」と思ったのはピクサー社の「トイ・ストーリー」における大成功なのである。映像が使えないとはいえ、権利関係があるとはいえ、これを話さない事にはジョブズの「持ってる感」は伝わらないし、実際劇中では「何か業績よくないんで戻ってくんない?」程度の話にしかみえなくなっていた。この時点でぼくのなかでは「伝記映画としては褒められたもんではない」という評価になった。

とはいえガレージを使って数人の友人からはじめたプロダクトが全世界規模の企業になっていく模様とそれに伴う悲喜こもごも自体は観ていて感動するし、文盲で本が読めない人には彼を知るよいきっかけとなるのでお薦めなのかもしれない。

 

p.s.
2013年、PCのカスタマイズ熱が冷めたぼくはiMacとiPhoneを所有している。重宝な事このうえない。

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