きんたま空間



 トップページ » 映画感想 » 大脱出 

 

大脱出


Escape Plan

感想:

既に多くの人が指摘しているだろうが、本当にスタローンは「思うてたんと違う入獄」が好きな男だと思う。過去数々の映画で悪い奴らにハメられては刑務所送りとなり、理不尽な拷問を受けてはおうおうと叫びながらも耐え、それを理由に自身の上半身や臀部ヌードをスクリーンに見せつける作品が少なくない。

対してシュワルツェネッガーという男は「見た目ほど馬鹿じゃない、むしろキレる男」という役が多い。現に博士号を取得する程の明晰さがあり、また2003年から2期7年に渡ってカリフォルニア州知事として祭りごとを取り計らう胆力があった。強いオーストリア訛りを含んだ大根役者的な台詞回しが未だに直らないのが不思議なほどだ。

そんな二人がタッグを組んだ! 大・脱・出・!!

……だから細かい事を言うのはよそうじゃないか、今から言うけど。

脱出不可能な大監獄! 何故ならそこは海の上に浮かぶタンカーの中にあるからッ!! という、この映画を前情報なしで観ていたならば確実に驚き、「はたしてここからどうやって脱出するのかッ!?」という興奮が沸くこの荒唐無稽な設定がですね、あっさりとポスターでバラされているんですよ。えっ、それバラしちゃうの、しかも予告編観たら1カット目がそのタンカーですよ。普通ならね、ぼくだってこの部分を叱りますよ、ネタバレ許すまじ、初鑑賞時の驚きを削ぐような真似はやめたまい、ってね。

でもいいんですよ、最後彼らはヘリで逃げるんだから。

あっお前こそネタバレ! とか怒らないで下さいよ。ぼくだってね、最後の最後、「こんな脱出方法があったのか!!」って驚くような、映画史に残るような知恵を絞ったクライマックスだったら流石に良心が咎めるので最後どうなるかなんて書きませんよ。劇場で確認を! って薦める話ですよ。でもね、「問題:洋上に浮かぶタンカー型刑務所から彼らはどうやって脱獄できたでしょうか / 答え:迎えに来たヘリで」というのはあんまりじゃあないですか。だからたぶん、「”ここ”から”どう”逃げるのか」は重要じゃあないんですよ、ということで、”そこ”がどこであるのかはもうバラしちゃっても構わんだろ意味ないし逆に予告観た人は「どう逃げるのか、が気になる(観に来る)」んだろうし、ということでタンカー情報全面解禁になったんじゃないかな、などと思ったのです。

さてすると、発生している問題の解決、というところはどうでもよいという話なのですから、そこに至る「方法」が画期的だったのでしょうか。いや、そうでもなかった。ふつうふつう。

脱獄を図るための材料調達、監獄所長にこちらのたくらみがバレるかバレないかの心理戦、もはやここまでと思った主人公たちに訪れる起死回生のチャンス! そういったものも、普通に趣味で映画を観ている人なら思いつく範疇のものを超えるアイデァは出てきませんでした。

ことスタローンに関してはですね、いよいよ駄目だという時は「脱出コード(Evacuation Code)」を所長に伝えると出れるという話だったのが、所長はそんなもんは知らん、と。それが序盤で判明することで、ハメられた事に気付く訳ですが、それでも必死に「脱出コードがある!!」って叫ぶんですよ。

何か脱獄のプロにしちゃあいきなり情けないなぁと思っていたんですが、実はこのシーンの前にこの刑務所の監獄がどうなってるか見せつけられるシーンがあるんですよ。それは個々が独立した部屋になっていて、しかも全面が強化ガラスかなにかの透明な素材で出来ている。つまり、四方八方から監視されるというつくりになっているんです。でもそんな造りなのに、それぞれの部屋にあるんですよ……金属製の大便器が。

これから待っているのは全方向から見られる状態でうんこしなければならない日々(ちなみにお尻を拭く手段は貝殻のようなものでなく、ちゃんとトイレットペーパーが備わっている事を確認しました)。看守囚人問わず、みなが自分のうんこを、大きいの小さいの硬いの柔らかいの、量があるだの便秘だのとやいやい言われる羞恥プレイ。落ち着いてうんこも出来ない恐怖、それをスタローンは瞬時に感じ取ったのではないでしょうか。” Evacuation”が意味したものは「脱出」ではなく、「排泄物」という意味の方であり、とりあえず誰にも見られない場所に設置されているふつうのトイレでうんこがしたい、そしたらしばらくは我慢できるからという訴えだったのではないでしょうか。もちろんそんな訳はありませんが、そう考えながらこのシーンを「可及的速やかに排泄を所望する(Evacuation Code)!!」というアピールとして見ると、とても微笑ましくなること請け合いです。そうする必要はまったくありませんが。

こうやって話のダメな部分をザクザクと削っていくと、上記のような欠点がありながらも、私がこの映画を楽しめた本当の理由がはっきりしてきます。それは私がハリウッドアクション映画で長年求め続けていたもの、つまり、「二大アクションスターが同じ目的を達成するために力をあわせて行動する」という事です。そういう点から見ると、こういったバディ系にありがちな、出会いがしらは不仲な二人、みたいな設定が無かったのはとても偉いとおもいます。

延々とダベる二人。完璧にコントロールされた刑務所内で、話題にするのは毎日脱獄の事ばかり。寝ても覚めても脱獄、脱獄。食事の時だって、口を開けば脱獄の話が出てきます。そんな二人を「あいつら変だな」とは思うものの、お互いを引き離したり、事あるごとにボディチェックをしたりしない刑務所職員たち。そりゃあそうです、彼らが一日たりとも離れ離れになるのは見ていて辛いですし、そして何より彼らはお互い自分の体を触っていい人間はこの世界にただ一人、と決めているのですから……。

そろそろ飽きてきたので締めます。この映画、終盤に脱走メンバーとしてもう一人加わるのですが、彼はイスラム教信仰者なんですね。それを利用してある情報を得ることが出来るのですが、ハリウッド映画においてソ連崩壊後の悪役として出てきたタリバンはじめとしたテロリストなどは、イスラム信仰者である事が多かったのです。いつの間にかイスラム信仰者≒悪となりかけていたこのハリウッドのお決まりを、そんな決めつけは止めようじゃないかとばかりに、この映画では大活躍させます。その彼の最後のセリフ、日本語字幕では「神は偉大だ」、英語字幕では「God is great」なっていたその言葉、実際につぶやいたのは「アッラーフアクバル(アラーは偉大なり)」でした。とても慎重に扱わなければならないこの言葉を使った本作は、911以降のVSテロリストアクションを作る上での新たな分岐点となったのではないでしょうか……知らんけど。酔っぱらって観たらちょうどいい感じに楽しめた映画でした。吹替えで観たかったすね。「午後のロードショー」で放映されてるような一連のB級アクション映画が好きな人は必見です。

p.s.
せっかくの二人の共演映画なのにアクションシーンが足りない!! もっとマシンガンとかガンガン撃ってほしい!! と思っている人は、コナミから「魂斗羅(こんとら)」というゲームが二十数年前に出ていますので、そちらをプレイするといいでしょう。2人にそっくりなプレイヤーに加え、エイリアンも出てきますよ!!

 トップページ » 映画感想 » 大脱出 

 この記事の先頭へ